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h邸

かつて商店が建ち並んでいた旧道沿いの角地に建つ、家族4人のための住宅である。

敷地の南(旧道)と西に面する道路は共に小学校の通学路であるため、平日は登下校する児童の行き来、週末はクラブ活動の送迎車など年間を通して交通量が多い。また、最寄り駅から敷地北側に位置する「城山」登山口へのルート上でもあるため、曜日・季節を問わず一定の人流がある。そこで、西側を完全に閉じた立面、南側を駐車場越しの開かれた立面とすることで、街との距離を確保した上で、旧道に対して明確な構えをつくった。

敷地周辺は、商店の廃業や建物の老朽化に伴う建て替えを機に店舗併用住宅から専用住宅に用途が変わり、旧道沿いに駐車場、その奥に閉じた住宅が建つ事例が散見される。本計画も旧道沿いに駐車場を配置しているが、近隣の店舗を踏襲した掃き出し窓の玄関にすることで、駐車場を玄関・リビングと一体的に利用できるセカンドリビングとし、暮らしの気配が旧道に滲み出すことを目指した。

平面は、15坪の床を2層重ねたシンプルな構成で、1階に水回りとLDK、2階に個室が配置されている。15坪の床は、1グリッド(=構造の単位)2,275mm×2,730mmの合計8グリッドで構成し、1グリッドは、浴室・キッチン・玄関だと少し広く(=ちょっとブカブカ)、ダイニング・リビング・個室だと少し狭い(=ちょっとキツキツ)ため、設えがグリッドを日常的に横断することになり、そのことで平面が硬直することが避けられると考えた。

また、現状の間取りは暫定的なものとの考えから、1階は水周り以外の間仕切り壁は設けず、可動家具の配置で生活の変化に対応している。2階は主寝室と子供室(2室)に間仕切り壁を設けているが、将来的に撤去することを想定して、天井との取り合いをなくし、電気設備を露出配線としている。

設えの変化と共に、住宅に手を加えるハードルを下げるために柱梁は全て現しとし、電気設備を1階の箱樋の中に露出配線とすることで、電気工事士の施主が自ら更新できる納まりとしている。

専用住宅として住み始めてはいるが、近い将来夫婦2人になった時、1階飲食店・2階住居、1階住居・2階工房などの併用住宅への転用や転貸も計画当初から想定した。 日本から、アメリカ、インドと移り住んできた家族の住まいに対する寛容なふるまいが、旧道に対して閉じた専用住宅の在り方を再考するきっかけになることを期待している。

h邸

設計

studio36

構造

構造設計スタジオ シエスタ

施工

株式会社シービル

写真

Asuto Noda

studio36